2014年1月24日金曜日

川崎病患児における初期免疫グロブリン静注治療不成功の予測因子としてのN末端前駆体脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT proBNP): 後方視的研究

 NT-proBNPとIVIG不応や冠動脈病変形成との関連性に関する報告はいくつかでていますが, 特筆すべきほど感度・特異度が良好ではないようです. ただ, その他のマーカーを組み合わせるとさらに有用性が増すのかもしれません.


Pediatr Cardiol 2013; 34(8): 1837-43

Abstract
 急性期川崎病での静注免疫グロブリン(IVIG)投与は標準的な治療である. 川崎病での初期のIVIG治療不応例は冠動脈病変の最も着実な危険因子であることがいくつかの報告されている. 本研究では血清N末端前駆体脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値がIVIG治療不成功のより高いリスクのあるKD患者を特定するための予測因子となりえるかどうかを調べることが目的である.
 本研究ではIVIG治療で入院したKD患者135人を後方視的に登録して分析した.
 患者135人のうち, 22人は初期IVIG治療終了後36時間で体温上昇があったため追加の救援治療を受けた不応者であった. NT-proBNP値は反応群(942.38±1293.48pg/mL)より不応群で有意に高かった(2465.36±3293.24pg/mL)(p < 0.05). 不応者予測における最適な感度と特異度が得られるカットオフ値は1093.00pg/mL以上であった. IVIG反応の予測における感度と特異度はそれぞれ70.0%, 76.5%であった. この所見は初期IVIG治療に反応しない危険性がある患者を特定するのにNT-proBNPは有用なマーカーであることを示している.

 著者はNT-proBNP値が1093.00pg/mL以上の患者では初期IVIG不応である可能性が高く, さらなる救援治療が必要となるかもしれないことを示した.

2014年1月23日木曜日

疑わしい急性虫垂炎に対するクリニカルパスの前方視的評価

 急性虫垂炎の診断は常に課題となるところですが, 放射線曝露を減らしつつ十分な精度を保って診断を行うことは重要だと思います。


Pediatrics 2014; 133: e88-95

Abstract
OBJECTIVE:
 SamuelPediatric appendicitis score(PAS)と第1の画像検査として選択的な超音波検査の使用を組み合わせた, 疑わしい急性虫垂炎に対するクリニカルパスの診断的精度を評価することが目的である.

METHODS:
 前方視的観察コホート研究が都市部の大学の小児救急外来で行われた. 初期評価後, 患者の虫垂炎の危険度を軽度(PAS 1-3), 中等度(PAS 4-7), 高度(PAS 8-10)のいずれかに決定した. 低リスク患者では電話での経過観察として帰宅した. 高リスク患者は速やかに外科コンサルトを受けた. 虫垂炎の中リスク患者では超音波検査が施行された.

RESULTS:
 登録された患者196人のうち65(33.2%)で虫垂炎があった. 最初のPAS1-344(22.4%), 4-7119(60.7%), 8-1033(16.9%)であった. 超音波検査は128(65.3%)で施行され, 48(37.8%)が陽性であった. 腹部CTスキャンは外科コンサルトによる求めで13(6.6%)に施行された. 虫垂切除で虫垂炎がなかった割合は3/68(4.4%)であった. 経過観察は196人中190(96.9%)でなされた. このパスでの全体の診断精度は94%(95%信頼区間[CI]91%-97%)で感度92.3%(95%Ci 83.0%-97.5%), 特異度94.7%(95%CI 89.3%-97.8%), 陽性尤度比 17.3 (95%CI 8.4-35.6), 陰性尤度比 0.08 (95%CI 0.04-0.19)
であった.

CONCLUSIONS:
 我々のプロトコールは小児の虫垂炎の診断において高い感度と特異度を示した. 施設は小児USにおける専門知識が利用できる割合を高めるための援助への投資を考慮すべきである. 治療の標準かはCTスキャンの使用に関連した放射線曝露を減らせるかもしれない.


小児高血圧に対するエナラプリルの効果と安全性に関する二重盲検プラセボ比較用量反応性試験

J Clin Pharmacol 2002; 42(8): 870-80

Abstract
 小児高血圧の治療に広く用いられているものの, エナラプリルは小児集団における効果, 用量反応性, 安全性をはっきりするためのシステマティックな試験は行われていない.

 この試験では6-16歳の小児高血圧患者110人に対して2つの連続相で前方視的に行われた. 本研究の両相の第1転帰変数はトラフ時(投与後24時間)座位拡張時血圧であった. 本試験の第1相の第1の目的はエナラプリルが小児において用量依存的に血圧を低下するかどうかを決定することであった. 2週間の二重盲検ランダム化用量依存期間で患者は体重により層別化され(50kg未満もしくは50kg以上), 以下の3つの投与量群に1つに割り当てられた: 低用量(0.625もしくは1.25mg), 中等量(2.5mgもしくは5mg), 高用量(20mgもしくは40mg). 血圧の低下は用量比(1:4:32)の機能として, 体重調節基準に基づいて検査した. 本研究の用量依存相の完了で2週経過したところで, 二重盲検ランダム化でエナラプリルあるいはプラセボのいずれかを中止した. プラセボ群とエナラプリル群の間の座位拡張期血圧における相違と定義した降圧効果について調べた. 本研究を通して副作用について注意深く記録した.

 エナラプリルにおける用量依存性の関係は負の傾きであり, 選択した投与量幅で線状であり, 高用量エナラプリルは血圧をより強力に低下させることが示唆された. ランダム化した有効薬かプラセボの中止により中等量から高用量群でのエナラプリルの降圧効果が確認された. エナラプリルの降圧効果は年齢, 性別, 民族, Tanner stageを通じて保たれていた。. エナラプリルは効果的であるように思われ, 概して6-16歳の小児では耐容性良好な降圧薬であった.


 体重が50kg未満の児では2.5mg, 体重50kg以上の児では5mg(平均 = 0.08mg/kg)を初期投与量として11回投与するとほとんどの患者で2週間以内に効果的に血圧を低下させる. 血圧は用量依存的に低下し, 高用量ではより強力に低下する.