2013年8月7日水曜日

ヒスタミンH1拮抗薬と熱性痙攣の臨床的特徴

Int J Gend Med 2012; 5: 277-81

Background:
 抗ヒスタミン薬による痙攣感受性によって熱性痙攣が引き起こされるかどうか明らかにすることがこの研究の目的である.

Methods:
 今回の記述的研究は20094月から20112月までの期間に, Madinah Maternity and Children’s Hospitalに熱性痙攣が訪れた250人の小児が対象となった. これらの対象を, 発熱時に抗ヒスタミン薬の投与を受けていたか否かで2群に分けた.

Results:
 両群における詳細な臨床症候を比較したところ, 非投与群に対して投与群では, 有意に発熱から痙攣発症までの期間が短く, また痙攣の持続時間が長かった. 1世代投与群および第2世代投与群との間では, 発熱から痙攣発症までの期間に有意な差は見られなかった.

Conclusion:

 これらの中枢神経系への効果があるため, H1拮抗薬は熱性痙攣やてんかん患者には投与すべきではない. H1拮抗薬には潜在的に抗痙攣作用のある, 中枢のヒスタミン系を抑制してしまうため, 若年の乳児に対するH1拮抗薬の使用に関して注意を促していくべきであろう.

肘内障整復における回内法と回外法の比較: 無作為臨床試験

Eur J Emerg Med 2009; 16(3): 135-8

Objective:
 肘内障整復における回内法と回外法の効果の比較がこの研究の目的である.

Methods:
 66人の肘内障患者を回内法もしくは回外法での治療でランダム化した. 最初の方法が失敗した場合, 2回目の整復では1回目と同様の整復方法を行った. 2回目の整復で失敗した場合, 整復方法を変更した. 整復の成功率と医師による整復の難しさの度合いを記録し, 統計学的に分析した.

Results:
 回内法では34人中32(94%), 回外法では32人中22 (69%) 1度目で整復できた (P=0.007). 回内法の2人と回外法の7人は2度目で整復できた. 整復の成功率は統計学的には同様であった (P=0.05). 2度の回外法で成功しなかった3人の患者に対しては整復法を変更する必要があった. それらの患者に対しては1度目の回内法で整復できた. 1度目の回内法での最終的な成功率は回外法よりも統計学的に高かった (P=0.004). さらに, 医師は回内法の方が回外法よりも有意に容易に整復できた (P=0.003)

Conclusion:

 最終的な整復率は同様であったものの, 回内法の方が1度目ではより効果的であり, 医師は容易に整復に感じ, 患児もより疼痛が少なかった.

ベトナムとオーストラリアにおける乳児の腸重積の危険因子: アデノウイルスは関係があり, ロタウイルスでは関係がない

J Pediatr 2006; 149: 452-60

Objective:
 この研究は, 乳児の腸重積の発症の頻度が高いと思われる発展途上国と頻度が低い先進国での, 危険因子を調査することが目的である.

Study design:
 前向き症例コントロール研究で, ベトナムのNational Hospital of Paediatrics(NHP)(n=533), オーストラリアのRoyal Children’s Hospital(RCH)(n=51), 空気浣腸もしくは手術で特発性腸重積と診断された2歳未満の乳児が対象となった. 診断は独立して盲目的に放射線専門医が集団で(84% NHP; 67% RCH)確認した. 危険因子の評価は標準化した質問表を用いて行った. 便検体は細菌, ウイルス, 寄生虫の病原体に対して分析を行った.

Results:
 ベトナムでの腸重積の発生率は1歳未満の乳児で302/100000(95%CI: 258-352), オーストラリアでの発生率(71/100000)よりも大幅に高かった. アデノウイルス感染症との強い関連が両方の場所でみられた(陽性となった症例はNHP; 34%, OR 8.2; RCH: 40%, OR 44).
ロタウイルス感染症やその他の腸管病原体, 経口ポリオワクチン, 食事成分や生活状況とは関連がみられなかった.

Conclusions:
 乳児での腸重積の発生率はオーストラリアよりベトナムで著明に高かった. いずれの場所でもアデノウイルス感染症と腸重積との間で強い関連がみられ, アデノウイルスが腸重積の病因に役割を果たしていることがあると考えられた.

2013年8月6日火曜日

小児好酸球性胃腸炎における臨床的特徴と治療への反応

Pediatr Neonatol. 2011; 52(5): 272-8

Background:
 好酸球性胃腸炎の小児患者における臨床的特徴や治療への反応の報告は稀である. この研究ではアジア人を背景とした小児好酸球性胃腸炎の臨床像および転帰について評価を行うことが目的である.

Methods:
 1997年から2009年までで14人の台湾人患者(男児9, 女児5)が好酸球性胃腸炎と診断され, 平均年齢は8.3(年齢幅, 1.4-14.3)であった. 消化器症状の存在, 末梢血での好酸球増加および生検での組織学的証明により診断を確定させた. 臨床データおよび薬物治療への反応について分析を行った.

Results:
 初発症状としては腹痛(43%), 貧血(36%), 低アルブミン血症(14%), 反復性の嘔吐(7%), 血便(7%), および成長障害(7%)がみられた. 末梢血好酸球増加は10(71.4%)の患者で認められ, 潜在的な便潜血陽性は7(50%)でみられた. 内視鏡検査では4(28.6%))で潰瘍性病変が認められた. 治療としてはステロイド単独, モンテルカスト単独, ステロイド+モンテルカストおよびステロイド+モンテルカスト+ケトチフェンが行われていた. ステロイドで治療されていた患者のうち, 2(2/9, 22%)は症状の再発なくステロイドの漸減に成功した. 3(3/9, 33%)はステロイド中止後に再発し, 3(3/9, 33%)は未だに低用量ステロイドを必要とし, 1人は追跡不能となった. モンテルカスト単独で治療された患者4人では再発はみられなかった.

Conclusions:
 腹痛の有無を問わず, 高い頻度で肉眼的あるいは潜在的な消化管出血を呈していた. 内視鏡的生検は診断には必要である. ステロイドは活動性病変に対する治療の中心である: この研究においては, モンテルカストも治療として, あるいは維持療法として効果的であった