2013年9月27日金曜日

熱性痙攣重積の危険因子: 症例対象研究

J Pediatr 2013; 163: 1147-51

Objective
 初回熱性痙攣(FS)をきたした児のうちでの, 初回熱性痙攣重積(FSE)の発症における危険因子について確認することが目的である.

Study design
 初発FSFSEをきたした児の症例をConsequences of Prolonged Febrile Seizures in ChildrenおよびColumbiaコホートから抽出した. 初発の単純性FSをきたした児と, それと別にFSEではない初発の複雑型FSをきたした児をコントロールとした. 3つの
集団の家族に対して同一のアンケートを行った. MRIプロトコールおよび読影はコホート間で一致させ, 同一の臨床医が痙攣発作の現象学について評価を行った. 危険因子はロジスティック回帰を用いて分析を行った.

Result
 単純型FSの児と比較してSERでは若年, 低体温, FS前に発熱に気づいていた時間が長い(1-24時間), 女性, 構造的側頭葉異常および一親等内のFSの家族歴が関連していた. その他の複雑型FSの児と比較して, FSEでは低体温とFS前に発熱に気づいていた時間が長い(1-24時間)が関連していた. ただ若年であることだけが有意なものであり, FSEではない複雑型FSの危険因子とFSEの危険因子は規模において同程度であった.

Conclusions
 初発のFSの児においてFSEは低い痙攣閾値(若年および低体温)および痙攣期間の調節障害の組み合わせにより出現している. FSEの多くのエピソードが気づかれないままでいるので, FSを評価する臨床医はこれらの因子について把握しているべきである. FSEを予防するための戦略を立てるのにはさらなる検査が必要である.

2013年9月6日金曜日

乳児のBabkin反射: 臨床的意義と神経メカニズム

Pediatr neurol 2013; 49(3): 149-155

ABSTRACT
BACKGROUND:
 Babkin反射に関する研究は非常に少ない―Babkin反射は手掌の刺激に反応して口を開けて腕が屈曲するものである. 我々はシステマティックレビューにより反射の臨床的意義と神経メカニズムについて明らかにすることを試みた.

METHODS:
 20128月から開始しMedline, EmbaseおよびGoogle Scholarを用いて調査を行った.

RESULTS:
 正期産児ではBabkin反射は出生児より誘発され, 年齢とともに抑制されるようになり, ほとんどは生後5か月の終わりまでに消失する. 生後4, 5か月での著明な反射や生後5か月を過ぎても反射が持続するのは一般的に異常とみなされる. その一方で, 新生児期や乳児早期でも反射の見られない健常児もいるので, この期間で反射がないことは異常所見とする必要はない.

CONCLUSIONS:

 異常所見を有する乳児に対しては脳性麻痺や精神発達遅滞といった神経学的異常の出現について注意深く観察すべきである. Babkin反射は非1次運動皮質からのインプットを受け取る脳幹網様体により介在されていると思われる. -口反射に基づいて, 網様体での反射メカニズムを上回る非1次運動皮質のコントロールが増加することにより, より適切な運動が発達する. すぐに, 1次運動皮質を上回る前頭前皮質のコントロールが優位となることで, 食事摂取に必要な自発的な眼--口の協調運動が生じる.

10年間での完全型および不全型川崎病の小児における冠動脈異常の疫学と危険因子

Pediatr Cardiol 2013; 34(6): 1476-81

Abstract

 川崎病(KD)は小児期の急性全身性血管炎である. 診断基準に基づいて診断される. しかし, KDの約20%は不全型/非典型で発症する. 川崎病は冠動脈病変(CALs)を合併し, 小児の後天性心疾患では最も多い原因と考えられている. ギリシャのアテネで10年間(2001-2010)3次小児病院を退院したKDの患児の診療記録を分析した

 研究期間中に14歳以下の小児86人が川崎病と診断された. 完全に診断基準を満たしたのは64(74.4%), 25.6%は不全例と考えられた. 心血管系合併症は48(55.8%), CALs28(32.6%)で認められた. CALの発生率は完全型と不全型/非典型KDとで有意差は見られなかった(42.2 vs 4.5%: P = 0.001). ロジスティック回帰分析では口唇と口腔の発赤がCLA発生と関連があった[オッズ比(OR). 3.03: 95%信頼区間(CI). 1.051-8.783: P=0.040]. 反対に不全型/非典型KDの児(OR, 0.092; 95%CI, 0.010-0.816; P = 0.032)およびそれまでに抗菌薬治療が行われた児(OR, 0.17: 95%CI. 0.036-0.875: P = 0.034)ではCALsの発生しにくかった.

 不全型/非典型KDやそれまでに抗菌薬治療をされていた児はCALs発生のリスクは低いのかもしれない. 今後の多施設研究によりこれらの関連性がより確立されるかもしれない.